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駄目オタ徒然草
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「アニメ化?」(書評:マルドゥックスクランブル)
※ リンク等、未完です。とりあえず、自分で決めた納期厳守のためにアップ。後日修正(この注意書きがとれたら、完成版です)

マルドゥック・スクランブルハヤカワ文庫JS (全3巻)
冲方 丁
mal.jpg

 近未来SFアクション サイバーパンク小説。まあ、分類することに、それほどの意味はないと思われるので、この作品がどの位置にあるかというのは、これ以上突っ込むことはしない。
 とは言っても、作者が「カオスレギオン」などの、いわゆるライトノベルの著者として有名であることから、その角度から読み始めると、結構しんどいかもしれないので、要注意であることだけは、付記しておく。

 さて、全体的なテイストは、ハリウッドSFを彷彿させる、退廃した社会と、進みすぎた科学を背景にした、近未来都市の裏側での「正義」の一派と、「悪」の一派の抗争である。
 というと、いかにもチープな作りを想像するが、筋立て、あるいは、プロット自体はチープではあると思う。
 もちろん、この辺は、劇的なドラマを仕上げるための必須のバックボーンであるから、そうであるからといって「悪い」評価をつけるほど、ボクは素直な読者ではない。
 問題は、このチープなプロットを、如何にドラマティックに仕上げるかという点において、細部を精緻に組み上げ、ディテールを形成する作家の力量にある。

 特にこの作品の終盤一歩手前では、作者があとがきで述べているように、「カジノでの場面」が鬼気迫るリアリティーをもって、描写されている。ブラックジャックというゲームを通じ、緻密な計算に裏打ちされた、そのゲーム描写にだけとどまらない、まさに人の心理のひだを分け入るように入り込む、瞬間の切り取りは、映像を超えた鮮明さをもって、読者に迫ってくる。
 あるいは、この部分を読むだけでも、この作品を読む価値はあると思う。

 また、この作品の道具立てである、「超科学」の描写もすばらしい。鮫が空を飛び、腕を切り落とされても、頬を涙が伝うだけで、ただその場で天を見上げながら思索をめぐらす人、多次元に展開した身体を持つ、考えるネズミ(実は、メインキャラクターの一人)が、メタモルフォーゼによって、あらゆる物質に変換されていく姿。物語クライマックスのアクションシーンでの、重力制御装置を駆使した肉弾戦(!)の迫力。
 これらは、現在のテックレベルではあり得ないにもかかわらず、作者は、なんの疑念も読者に抱かせず、淡々と筆を進める。その筆力は、賞賛されるべきであろう。

 さらには、キャラクターや道具にダブルミーニングを施した名前を付け、その名前の持ち主達の将来を暗示させながら、これにあらがうキャラクターの心理描写を、名前をとっかかりに展開する手も、うまい。加えて、事象にその意味を付加すること、すなわち象徴的表現の駆使も優れている。例えば、もっとも分かりやすいものでいえば、物語の最後のアクションシーンで、バロットが卵状になった体衝撃システムが割れて、まるで雛が生まれ出てくるかの如く、出現するところなどがそれである。
 また、言葉といえば、主人公バロットが、繰り返し口ずさむ歌に宿る意味、その韻を踏む軽快さと、語られる意味の重さが、物語の展開に従い、次々と変化していく様が、演出の妙として、小気味よい。

 あるいは、これらの描写の妙は、作者の「小説」という「思想」に対する回答なのかもしれない。すなわち、メインの筋立ての模倣や類似を避けられないのならば、その作者の個性は、まさにディテールづくりにあり、そこにこそ、オリジナリティーがあるというものである(この辺は、作者のHPで語られる、小説を書く方法指南にも、うかがわれる)。
 そうだとすると、最初にあげた筋立てや、プロットのイージーさは、作品の評価に、なんの影響もないことになる。

 しかし、この作品を読んで、とても面白かったが、はてしかし…と、思ったボクの感想の引っかかりは、まさにここにあるような気がする。
 最初に述べたように、この作品のプロット自体はチープであるが、それ故に作品として評価を低くすることはない。問題は、果たしてメインの筋立てに、ディテールが、美しく肉付けされているかである。

 この作品の、メインスフレームとして、主人公バロットが「殻」を、突き破るまでの、心の「焦げ付き」をいかに、克服していくかという流れがある。彼女の生い立ち、そして、物語冒頭での悲劇、さらには、万能の相棒ウフコックを得たあとでの、心の変化がそれ。しかし、如何に劇的な環境の変化があったとはいえ、あまりにもその変化は記号的ではなかろうか? 諦観→絶望→深層心理の自覚→猜疑→希望→傲慢→自己嫌悪→信頼の回復→克己→昇華と、流れる彼女の心理に、実は外部からの影響はない。全て自己のやったことについての主観的評価からしか、彼女の心理は変わらない。いや、そういいきってしまうのは、いささか乱暴であるが、ウフコックやドクターは、彼女の心理の変化の触媒でしかない。もちろん、人間の心理などそんなものであるから、それはそれで仕方ないのだが、ボクが他の多くの小説を読むときに感じている、二人称的な主観(本来はあり得ない、複数の個人の2重の主観を体験することによる、人の心理の相互影響による成長の揺らぎを読み込むことなど)が、この小説にあまり表現されていないことが、メインフレームと、肉付けの関連性を、疎に感じる要因ではないだろうかと思う。
 だから、あまりにも濃密なディテールの中、読み終わったあとに残ったのは、非常に素直な少女の成長譚でしかなかった。
 まあ、エンターテインメントとしては、それが正しいのかもしれないが…。

 さて、そうは言っても、面白いという、その点に関してだけは、曇りなく、ボクはこの作品を薦める。
 もちろん、「そんなオーバーテクノロジーがあったら、世界征服してから、世直しした方が、ええんとちがいます?」という、ツッコミはしてはならないのが、お約束である(^^;

 あっ…、ここまで書いて気がついたのだが、今回は冒頭のあらすじをやっていない^^;
 ということで、かいつまんで…。

 かなり遠い未来。マルドゥックシティーにを裏側の経済から牛耳る、オクトーバー社のカジノ部門の責任者シェル。この男に囲われた少女売春婦バロットが、シェルに「消される」ところから、物語が始まる。なぜシェルはバロットを選んだのか、なぜ消したのか? 何もわからないまま灰に、そしてダイヤモンドになろうとした彼女を救ったのが、ドクターイースターと、ウフコックの「事件屋」コンビ。まあ、私立探偵と、検察官の中間のような仕事らしいが、彼らの使うオーバーテクノロジーによって、ある種の超能力を得て、よみがえったバロットが、自己の過去と、シェルの真意を確かめるため、そして、自分自身の「焦げ付き」を払拭し、殻を破り、生まれ出るために戦いを挑むのが、この話の大まかの導入の筋。

 まあ、3巻という分量にしては、時間をかけずに読める(ある意味、あれだけ、文章に情報を詰め込みながらこれだけすいすい読めるものを書ける作者の力量は、超人的)から、あくまでエンターテインメントとしての読み物を、読みたいという方には、おすすめしておこう。
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 ところで、この映像化権をGONZOが取得したそうだ。まあ、何となく、映像化するならここだろうなと思ったけど、かつての竜の子にやらせてみたいなぁと、思ったのは、ボクだけではないはず。
 まあ、お手並み拝見と言うことで。
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参加をお待ちしています☆
2005/11/25(金) 07:07:25 | URL | ヵヮィィ☆ブログランキング【bitz】 #-[ 編集]
 訪問いただき、ありがとうございました。もう、いらっしゃることがないとは思いますが、もし、またいらっしゃる機会がありましたら、左上の画像の下に注意書きを追加いたしましたので、是非ご覧ください。
2005/11/26(土) 01:11:03 | URL | Jey-c #-[ 編集]
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