fc2ブログ
駄目オタ徒然草
 レビューを中心にご覧になりたい方は、カテゴリーの月別インデックスをクリックすれば、一覧表示が見られます。
「おにぃ~ちゃん!」(漫画評:恋風)
「恋風」吉田基已 イブニングコミックス 全5巻


 う~ん、とても評価に困る作品。絵は、非常に丁寧に描かれているし、コマ演出も巧みだ。トーンをいっさい使わない手法で、しっとりとした雰囲気を醸し出している。主な登場人物のキャラクターも立っている。
 ただ、やっぱりどうしても、この物語設定に感情移入できなかった。もちろん、物語のテーマとして、妹と兄が恋心を抱く話というのは「アリ」だと思う。ただ、そこに、ここまで不毛な葛藤を織り込んで、結局一番修羅の道にはまりこんだまま終わる物語に、正直いやな気分になった。
 いや、「悲劇」がダメだというのではない。ただ、その悲劇が、作中で千鶴がこぼすように「気持ち悪い」形で現れるなら、そこに物語としてのカタルシスは生まれない。

 確かに、この物語は「妹萌え~」というような、軽々しいノリの作品ではない。作者自身が、どう決着をつけようかと迷いをもっている部分が、そこかしこに見られる。特に3巻の終わりに見せた、一つのエンディングの形が、もしかしたら、作者の見せたかったものかもしれない。許されない恋だから、思いを確かめて距離をとるという、大人の結論を、耕四郎にとらせたのは、作者の良識の一端だと思う。
 ただ、それはそれで、ありきたりと言えばありきたりの終わり方だ。結局「逃げる」という形で物語を終わらせることになる。そこには、何のメッセージもなく、ただの予定調和が横たわっているにすぎない。
 そのこと自体を作者はわかっているからこそ、あえて、4巻、5巻に当たる物語を紡いだのだろうが、結局、何も解決しない、ただ、葛藤を「ちょっと、横においといて」に、しているだけだ。これなら、3巻の終わりをエンディングにした方が、まだ良かったとも、思える。

 さて、ここまで書いておいて、今更だが、冒頭のあらすじ…。

 耕四郎は齢30になんなんとする無精ひげの、スマートとはほど遠い「男」。最近数年つきあってきた恋人にふられたばかり。ふられた勢いで、ついつい飲み過ぎたその翌日、電車で高校生の少女にふと、視線が行く。少女は耕四郎が降りる駅の手前で降りるのだが、定期を落としてしまい、耕四郎がそれを拾い渡してあげる。桜の舞い散る朝。どうも、彼女は少し泣いていたようだった。
 その後出勤した耕四郎は、同僚の千鶴と、遊園地の近くのホテルで、打ち合わせ。彼は、結婚相談所に勤務している。打ち合わせが終わり、ホテルを出るときに千鶴から、隣の遊園地のチケットをもらったから、要らないかと言われるが、耕四郎自身はついこの間別れたばかりだから、いるはずもなく…。と、ホテルを出たところで、ばったり、朝にあった高校生に会う。耕四郎は、彼女にチケットをあげるが、彼女は「じゃあ、一緒に行きませんか?」と提案、誰かを待っているらしいが、しばらく時間があるらしい。
 ひとしきり遊んだ最後に、二人は観覧車に乗るが、そこで、彼女から最近失恋したことをうち明けられる、耕四郎は彼女を励ますつもりが、つい、最近の自分の失恋の話になり、不意に泣いてしまう。はっとして、耕四郎の頭に手をやる彼女…。
 一周して、閉園の時間。初対面の少女の前で取り乱したことを恥じながらも、もうあうことないだろうと、高をくくっていたら、、そこに耕四郎の父親登場。かれに「お父さん」と声をかける少女…。そう、彼女は、幼い頃に父親と母親の離婚で別れ別れになった実の妹七夏(なのか)だったのだ…。
 そして、彼女はこの春から、父親の元から、進学した高校に通うことに。そう、耕四郎は、その目の前で、取り乱してしまった実の妹と、10数年ぶりの同居をすることになったのだ。そして…。

 まあ、シチュエーションはギャルゲーや、お手軽ラブコメのそれなんだが、最初にも述べたように、非常に丁寧にペンを入れているので、なんだか全然違う物語のようにも見える。

 とりあえず、どう思うかは、個人差があると思うが、少なくとも僕自身と感性の似た人にはお勧めしかねる。このBlogの、一連のレビューを見て、「ちげ~よぉ」と、僕の意見にことごとく反対の人にはお勧めかと…。

 ちなみに、妹の七夏は、七夕に生まれたから(これは物語中に語られている)、で、じゃぁ、耕四郎はと言えば、まあ、四月だろうね。耕す春。そういうことでしょ。
スポンサーサイト



コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック