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「しあわせのカタチ」(漫画評:夢かもしんない 星里もちる
「夢かもしんない」星里もちる BIG COMIC
全5巻 読了日不明

 「あなたはハッピーですか?」
 そんな台詞をなんのてらいもなく物語の前面に出して、押し通してしまえるほどに、この漫画は優しさに満ちている。大人になるということが、人との関係を築き、その人たちの関係の中でだけしか幸せを得られなくなることであり、それが「我慢」を、幸せの試練として人に与えることを、その中でしか人は「ハッピー」を手に入れられないことを、作者、星里もちるが、穏やかな口調で、淡々と語っている。
 これは、そんな物語。

 主人公の加勢は、PC販売の営業マン。切れ者の辣腕…というよりは、人との信頼関係や、人となりで相手方の信頼を得、成績をあげている人格者。ご多分に漏れず、家庭内では、仕事のしすぎでちょっとぎすぎすしている。
 ヒロインは元アイドルの幽霊、夢野すみれ。加勢にだけ見え、加勢にだけ語りかけ、加勢にだけに「私がハッピーにしてあげる」とふるまう。まあ、取り憑いてるんですな^^;。
 もう一人のヒロインは、会社の後輩、佐藤さん。あこがれている加勢に、恋心を抱き、加勢をフォローしたり、頼ってみたり。まあ、不倫に踏み込んじゃうんですが、星里もちるの描く不倫は、これがあんまりどろどろしないんですね。中学生の恋人同士がクラスのみんなには内緒にしておこうっていう程度。一応、関係は持つんですが、なくっても話は成立するっていう程度。

 ストーリーは、幽霊の夢野すみれが、会社や家庭で、我慢を重ね「なんのために?」と、疑問を持ちながらも、周りの人たちのために、立ち振る舞う加勢に「そんなのハッピーじゃない」と、「自分のしたいことをしようよ」と、加勢に幸せになってもらおうと立ち回る。
 最初は、すみれを相手にしていなかった加勢が、徐々に自分のおかれた立場に「ずれ」を感じ、そして、なぜ夢野すみれが、自分に対して、それほどまでに一途に語りかけるのかを、「思い出して」いく。
 その結果、自分に正直になろうとしたり、誰かを幸せにしようとしたりあがき続けるのだが、その姿を見て、夢野すみれが「大人になる」ことを理解し、そう理解するすみれを見て、もう一度自分の幸せを、加勢が確認していくという話。

 星里もちるの、このころの作品に共通していえるのは、大人になってしまった子供(青年)が、子供心、青年の心を振り返り、葛藤する姿を、丁寧に描いている点にある。
 本当に、僕はそう生きたかったのか? あのころの僕があこがれていた大人に、自分はなれているのか? いや、あのころあこがれていた大人というのは、本当にあこがれていたとおりなのか?
 そして、大人になるための「さびしさ」を乗り越えて、加勢が、佐藤さんが、すみれが、お互いを慈しみながら、「いい意味で」折り合いをつけることが、本当の幸せだと気づき、それぞれの道を歩んでいくところでこの物語はFinとなる。
 別れや、死で泣かせる物語が多い中、人の成長で泣かせることができるこの物語は、「大人」のおとぎ話として、秀逸だと思う。

 読後に、貴方自身が、もう一度「幸せ」の形を確認できることができる良作であるから、是非ご一読を。
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