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駄目オタ徒然草
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「♪火星~の、う~み~は~」(アニメ評:絢爛舞踏祭)
絢爛舞踏祭 ~ザ・マーズ・デイブレイク~」全26話
制作:ボンズ 監督:森邦宏
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 実に正しくジュウブナイルだ。

 義賊の海賊に、お宝。淡い恋物語も、派手なドンパチもある! 主人公はスーパーマンクラスだけど、妙にフレンドリー。彼を取り巻く仲間達、そしてライバルまでも味方につけて、最後はやっぱり正義が勝つ!

 ってなわけで、この作品が放送された時間帯、木曜午後6時半という時間帯の対象視聴者に対して、実に良質の作品が提供された。むろん、対象者は、我々アニオタプチオヤジではなく、かつてよりは多少こまっしゃくれてはいるが、未だ少年少女の心をもっている(当たり前だがw)、現実の少年少女達である。
 この作品は、もともとは同名のPS2のゲームをベースに世界観設定と、主人公をのぞく主要登場人物の設定がなされている。だから、いきなりイルカやネコがしゃべったり、当然のような顔をして、美少女(風)宇宙人が、潜水艦のクルーになっていたりしても驚いてはいけない。ましてやボールズというなんだか、ハロにインスパイヤー? みたいなメカが、主人公の操るロボットのコクピットの後ろに、まるでVガンダムのハロのように鎮座ましましていても、驚いてはいけない。これはこの世界設定の本当に重要なキーなのである。
 とりあえず、設定自体はおもしろいので、こちらのサイトで、宇宙開発史を勉強しておくのが、大人の視聴流儀かもしれない^^;
(絢爛舞踏祭の読み物風設定サイト→http://www.kenran.net/world5.html)

 さて、とはいえ、ここに全く何もその設定を書き残さなくては、ボクの覚え書きとしての機能が果たせないので、ややざっくりと世界観設定と、冒頭のあらすじを。

 時代は2252年(たぶん)の火星。このころの火星はその表面の95%を水に覆われた水の惑星である。なぜ水の惑星になったかは物語中に語られないが、上にリンクしたサイトで詳しく述べられている。
 当然火星では、陸地がほとんどないため「都市船」と呼ばれる巨大な海上都市が、人々のすみかとなっている。そして、海がその大部分を占めていれば、その交通インフラは「船」に頼らなければならず、その結果、海が人々の戦いの場にもなる。
 火星は、この当時、基本的には自治政府を持ち、大統領制を敷いているが、実際には地球政府の支配下にあり、軍隊も持たず、いいようにあしらわれている。資源を含むその実権は火星政府にはなく、火星の人々は地球に対して反感をもちながらも、従わざるを得ない。
 結果、海を我が物顔で行き交い、派遣された地球軍をも翻弄する「海賊」達は、一種の義賊として、人々の溜飲を下げていた。

 主人公は、そんな火星の都市船のひとつ、アデナの住人。名をグラムという。メカの操縦などがめっぽう得意で、腕っ節は弱くはないが、どちらかというと、軽業と逃げ足が得意。ある日、自分を兄のように慕ってくれる少年、ボンをトラブルから救うために、大立ち回りの末に海中へ……ところがもっていたペンダントが光り、主人公を救ったのが、このお話の主役メカ「希望号」。そして、同じタイミングでアデナを襲った海賊「夜明けの船」に乗り込む羽目になる。
 地球からは、主人公の幼なじみのベスティモーネも、夜明けの船討伐隊の軍人としてやってきて、さらには後に主人公をお兄ちゃんと慕う、大統領の孫娘エノラまでやってくる。この夜明けの船と主人公、そして二人のヒロインが中心となり、「宝島」や「海底2万マイル」のような、海洋ロマンが繰り広げられる。

 さて、では、実際に見ておもしろいかと言えば、おもしろいだろう。冒頭にも書いたが、ジュウブナイルとして備えていてほしい要素はふんだんに詰め込まれている。26話という尺の中で、少々の「外伝」っぽい話もあるが、しっかりと話をまとめている点は、さすがに天下のボンズ。そつがないばかりか、画面に、子供向け作品だからという手抜きの色はいっさいない。
 絵も動くし、音楽も実に小気味よい。

 が、それはあくまでジュウブナイルとしてである。大人が、うんうん考えながら見るモノではない。謎らしきものはあるが、決して謎解きやテーマ発見がこの作品の正しい視聴姿勢だとは思われない。
 むしろ、プチオヤジ世代としては、子供の頃に見た合体ロボットものや、ヒーロー特撮ものを現代風に高度にアレンジしたものだと思ってみた方がよい。
 確かに、登場人物は物語の中で、迷い、苦しみ、自問自答する。それは、決して「子供の悩み」などではなく、まさに青年の悩みである。しかし、この作品の中には、正しく子供を導く大人達が、ちゃんと存在する。その導く方法は大人それぞれであるが、どれも皆、間違ったことはしていない(悪役側ででてくる者達も、正しく悪役であるw)。
 だから、モニターの前で視聴者はいっさい苦悶する必要はない。むしろ、このアニメの対象層を考えれば、そういったところで話を停滞させるのではなく、正しき大人によって、子供達が進むべき(と思われる)方向を指し示す方がよい。
 そして、それこそが、かつてジュウブナイルが子供達に指し示した道しるべそのものなのだと、ボクは思う。

 だから、この作品は正しい。話の深みがないとか、主人公の葛藤がないとか、そういう批判はお門違いも甚だしい。
 よって、おもしろいことはもちろんだが、この作品は、正しくジュウブナイルとして、子供達と、子供達の頃を思い出したい、青年、プチオヤジ達にお薦めの作品である。
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