両者に共通するのが、良い前評判が皆無と言っていいほどに、というか、そもそも、アニメオタクの間でさえもそれほど期待されていなかったこと。
しかも「エウレカセブン」がBONZの肝いりで4クールの作品として、作成されたのに対して、「シムーン」は、ディーンという有力制作会社の手によるとはいえ、テレ東2クールというやや控えめなモノである点で、「シムーン」はさらに条件が悪い。
案の定、放映開始当初は致命的な低視聴率と、深夜アニメを見ているディープなファンにさえも見放されるくらいに、酷評されていた。
が、ボク自身はFilnの日記にも書いていたように、この作品をかなり買っていた。これは、「百合趣味」とか、「萌えキャラ」とか、そういうレベルの話ではなく、「エウレカセブン」同様、その導入の第1話で、スタッフのこの作品に懸ける並々ならぬ意気込みが感じられたからだ。あえて強調するが、この作品については、「商品」ではなく、ちゃんと「作品」としての評価をすべきだというのが、当初からのボクの考えである。
ところが、ここに来て、アニオタのBlogなどで、この作品が再評価され始めている。
実は、この作品は、「物語」を作る上で、非常にオーソドックスな作りをしている。異世界モノである宿命として、世界観の説明が必須なのだが、それを、きちんと「物語」の中で過不足なく説明した上で、「物語」自体をちゃんと展開させ、あまつさえ、詰め込み気味になりかねない、ストーリーも、きっちりと各キャラクターを単に「ステロタイプ」ではなく、ちゃんと、際だたせている点に脚本・演出の実力を伺える。
この作品は、最近大手を振るって、荒稼ぎをしている「定型の設定」や、いわゆる「萌え」で、手堅く視聴率を稼ぐ作品とは異なり、ちゃんとした物語を、視聴者に投げかけるモノになっていると思う。
はっきり言うと、深夜アニメ「オタク」を自称するのなら、この作品のレベルについてきてほしい。この作品をちゃんと楽しめるか否かが、ちゃんとした(といういい方は、やや違和感があるが)オタクか否かの分水嶺であると思う。
「涼宮ハルヒの憂鬱」もいい。「ARIA」もいい。だが、その作品達を語るのであれば、その視線を、この作品にも向けてほしい。