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「自伝"的"」(マンガ評:上京ものがたり)
※ リンク等、未完です。とりあえず、自分で決めた納期厳守のためにアップ。後日修正(この注意書きがとれたら、完成版です)

上京ものがたり小学館
西原理恵子
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 ご存じ「オヤジ転がし(いしかわじゅん命名)」で、有名なりえぞう先生の近著。とはいえ、出版からもう1年近くたつし、彼女の作品としては、あまり話題にならなかったと思われる1冊。
 「晴れた日は学校を休んで」と同系列のこの作品は、一歩間違うと、読者に彼女の「自伝」とも追わせる勢いがある。いや、実は僕もそう思って読んでいた。が、各種インタビュー記事や、彼女のプロフィールなどとの整合性から、「ちがうっぽいよ」との、妻の指摘で、「そっかもね」と、納得。
 確かに、同書の記載はおろか、帯にも、「自伝」なんてことは一言も書かれていないから、思いこむ方が間違いなんだろうね。それでも、同書の中には、彼女の経歴とオーバーラップするところも少なくなく、「自伝的」と、枕詞をつけるくらいには、それっぽいのかもしれないと思う。

 さて、この作品で冒頭のあらすじを書くなんて、野暮なことはしない。書店で5分もあれば最初の雰囲気を体験できるだろうから、是非見つけたら、ぺらぺらとページをめくってほしい。
 この作品のおもしろいところは、そのキャラクターの絵柄だ。もちろん、りえぞう先生の風味は残しつつも、今までとどこか違うタッチ、そして、キャラクター造形をしている。表情の作り方だって、ほかの作品のように、むやみやたらにはちゃめちゃな崩し方はしない。全体的なイメージとしては、今までの彼女とは違い、慣れない絵柄を、時間をかけて、丁寧に描いている雰囲気がある。もちろん、彼女が変節したのでないことは、現在毎日新聞に連載している「毎日かあさん」を読めば、はっきりするから、あえてこの作品のために、タッチと、お話の雰囲気を作っているといえる。
 この辺は、下手だ、下手だと言われつつも、やはりプロの漫画家なのだなぁと思うところ。実際、表紙の主人公の絵柄などを見ても、こんなにすばらしいラインをかける人の絵を、下手だと評価する人の審美眼を疑ってしまう。いや、僕は一度だって、下手だなんて思ったことはないですよ。

 絵のことで言えば、相変わらず、その描く風景は美しい。最後の2ページに描かれる山々の稜線の、なんと美しいことか。その前ページ右上のコマの街の絵の、なんと寒々しいことか。
 もう、この3ページを見れば、彼女の絵の才能を疑うことはできないだろう。

 さて、この作品が自伝でないというのは、冒頭で述べたとおり。ただ、彼女の作品、絵に対するスタンスは、作品全体を通して、そして、これも最後の3ページで、バン!っと、提示されている主人公の言葉に代弁させているのだろうと思われる。
 そして、それは、ただのギャグ漫画家としてのそれではなく、東南アジアの片隅で、路上の少年たちを見て、ふと心にとまったことを書き留めた一文などに示されるように(「鳥頭紀行」参照)、とても深遠な思想に基づいている。
 では、彼女のその深遠な思想が、どこから生まれたのか? それは、この作品に描かれている、ほぼ事実であろう、水商売のバイト先での経験、出版社に根気強く持ち込みを続けた経験、そして、美術学校時代の同級生に対する冷めた想いが、彼女の幼少時代の経験とオーバーラップし、人への慈しみという形で現出したものだと思われる。

 だから、彼女の作品が、なぜか、心の奥の深いところに届くのは、きっと、そういう訳なんだろう。
 西原理恵子にハズレなし。当分、その評価は動かないように思う。

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ボクのなんかより、より良く、この作品の雰囲気を伝えているレビュー
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