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駄目オタ徒然草
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「ツンデレは萌えているか?」(漫画評:バドフライ)
バドフライ」全3巻(スピリッツコミックス)
著者:イワシタシゲユキ

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 バドミントンというと、その競技人口や公衆への認知性の割には、「マイナースポーツ」というイメージが強い。上記の通り、競技人口や公衆への認知度を考えれば、マイナースポーツというよりは「地味スポーツ」という方が正しいかもしれない。
 実際、競技の認知度・人気度を測る尺度の一つである「漫画化」でも、この競技はあまり高いポイントを得ているわけではない。

 さて、そんな中、今回紹介するのは、そのバドミントンを題材にした数少ないマンガの一つ。しかも、スピリッツ連載にありながら単行本3巻で終わったという、まあ、不遇の作品。
 でも、ボク自身は非常に好きで、スピリッツはこれと「20世紀少年」「東京80's」のためだけに「立ち読み」していた。
 正直いえば、例えばこの作品がその題材に卓球を選んでいようが、セパタクローを選んでいようが、多分、好きだったろうと思う。実は、この作品のヒロイン鈴森秋葉のツンデレぶりにのっけからべた惚れになったことを白状しよう。
 そう、題材は何でもよかったのだ。このイワシタシゲユキ氏の描くヒロインが、この作品の魅力。最近のマンガでは最強のツンデレヒロインであると思っている。まあ、ツンの部分が激しく表面にでているから、それでもめげない主人公茂一の熱意が、暑苦しくならないという(計算したのか、してないのか? 多分前者だと思う)キャラ配置は絶妙だった。
 キャラクターのデザインも、イワシタシゲユキ氏が、こういう目のつり上がった勝ち気そうな美少女画を得意としていたということも奏功して、ヒロインの内面をよく表したすばらしいものになっている。主人公やそれを取り巻く男友達の配役も、べたではあるが、無駄がなく、しかもキャラデザインも秀逸。

 さらに、この作品の面白いところは、敵はライバルではなく、身内であるということ。もちろん、主人公にライバルはいるのだが、純粋にバドミントンのうまい超えるべき壁として、比較的無機質に描かれている。むしろ、ねっとりとした描写によって、不気味さを醸し出しているのは、サディスティックな女コーチ(このキャラも、すごくいい味出してる)。加えて、身内なので、その真意が分からないままのサディスティックなしごきは、主人公やヒロインにとっての敵なのか、味方なのか、分からないままの苦闘として、読者に焦燥感が伝わってくるうまい演出になっている。

 さて、冒頭のあらすじ。
 汗っかきで、目がドングリ。実は強靱な足腰と驚異的な動体視力で、スーパーヒーローの素質をもっているのだが、そういう部分が開花する前に、主人公如月茂一は高校に入学する。入る部活動も決めかねていたところ、クールビューティー、この作品のヒロイン鈴森秋葉に偶然出会い、電撃的に一目惚れ。いきなり交際を申し込むが「私に、バドミントンで勝ったらね」という条件をつけられる。根が真っ正直な茂一はその提言に乗っかって挑戦をする。が、彼女は、実は、男子バドミントン部のマネージャー。廃部寸前のチームを救うべく部員勧誘に体よく使われた格好に。
 しかも、彼女は膝を壊すまでは、この学校の女子部(強豪)のエースだった。もちろん最初は、茂一がかなうはずもなく…。しかし、少しずつこつを覚えてきた茂一の顔からは、それまで滝のように流れていた玉の汗が消えていた…、そして…。

 ということで、まあオーソドックスとは言い難いが、この作品もスポーツ(ラブコメ)マンガの定型はきっちり踏襲している。
 が、非常にいいにくいが、なぜ、人気がでなかったのか…。

 一つには、バドミントンという題材を選んだ影響は少なくないだろう。冒頭にも述べたように、バドミントンは競技人口も多いし、公衆への認知度も高い。しかし、では、だからといって、世界のバドミントン勢力図はどうなっているのか? 日本国内ではどうなのか? バドミントンのゲームルール、ポイントはどうやって計算するのか? 果たして、知っている人はどれくらいいるのだろうか?
 この辺、サッカーや野球はおろか、愛ちゃん人気でとみにその認知度が高まった卓球などに比べても、かなり難しい。
 加えて、競技をしていた人には当たり前なのだが、実はえらく体力のいるスポーツだということは、あまり認知されていないような気がする。体力の固まりである茂一が作品内でへたばってしまい、ヒロインの秋葉が、膝を壊してしまうほどの激しさに、一般人の認知度ではリアリティー実感できないのではないか?

 次に、このキャラクターデザインの取っつきにくさが、一つの壁になっているとも、思われる。これも拙文の冒頭で書いたとおり、ボクが惚れるきっかけになった要素の一つであるが、あのキッツイ表情のヒロインは、まあ、微妙ではある。
 彼女がほおを真っ赤にして照れるシーンは、ツンデレ萌にとっては、至福の瞬間だろうと思うが、そうでない人には、「その顔のままで照れるな、キモイ!」ってことになりかねないよなぁと、あくまで想像だが思う。この辺は、現在一般に受け入れられている、いわゆる「かわいい」キャラクターデザインの中では異色が故に味わう悲劇かもしれない(が、ボクは大絶賛)。

 さらには、スポーツマンガにしては、その画風が躍動感を表現しにくいものであったことが、また一つの問題だったのかもしれない。それはそれでいいと、ボクは思うのだが、その対極にある、例えば曽田正人のマンガなんかを見ていると、あちらがシャッター速度をあえて落として、しかも、パースなんかがゆがんでもお構いなしの臨場感で、その動きを写す手法で画面を構成しているのに対して、イワシタシゲユキ氏のそれは、高速シャッターで、しかも、光量を最大限にあげて「光」だけの画面を構成し、あえてそのキャラクターが最大限かっこよく写るよう緻密に計算しつつ画面を構成しているように思う(実は両者とも、非常に計算された画面構成をしていおり、目指すところは同じであるということは、よく見れば分かる。特に、イワシタシゲユキ氏の一コマ一コマは、それだけで鑑賞に堪えるものばかりだ)。
 この辺は、読者によっては、スポーツマンがとしては非常にまったりした作品に見えるのではないだろうか?

 というわけで、個人的な意見としては、この作品は非常にすばらしい作品であるが、「読者を選ぶ」という意味で、とんがったが故に、一般受けしなかったと、ボクは感じている。
 次回作も、非常に期待しているのだが、できればこのとんがり具合を、丸めて一般受けした作品にならないように祈っている。でも、そうしないと売れないし…。売れないと、短期連載で終わるし…。痛し痒し…。
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