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駄目オタ徒然草
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「ちぇいんぐ!」(漫画評:ウィングマン)
「ウィングマン」桂正和
ジャンプコミック(集英社)

 私が少年時代に、夢中になって読んでいた作品で、思い出深い。私自身、当時、少々絵がうまかったので、あおいや、美紅(いずれも作品中のヒロイン)の絵を描いて、友達にあげていたことを記憶している。
 このころ、少年ジャンプは、奇面組、シティーハンター(キャッツアイだったかな?)、Drスランプなど、そうそうたる連載陣がひしめき合っており、編集部としても、新人で冒険がしやすかったのかと思われる。
 そのチャンスを見事に射止めた桂正和氏、で、その魅力に、一発で虜にされた私、まあ、時代感覚にマッチしてたのかなぁ?

 さて、ウィングマンの魅力を語るについて、たぶん当時の感覚で行けば「えっと、うんと、とにかくすごくおもしろい!」で、終わると思うが、そこはそれ、大人の分析をしながら語りましょう。
 残念ながら、手元に単行本がないので、嘘・記憶違いがあるかもしれないが、その辺は、ご容赦を。

 物語は、健太(主人公)の登校中、電柱の上から水着姿の美少女(あおい)がふってくるところから始まる。健太自身は、ヒーローにあこがれ、自ら考案した「ウィングマン」の着ぐるみをきて、日夜ヒーローごっこをする中学生(コスプレオタクのはしりですな^^;)。確か、記憶間違いでなければ、落ちてきたあおいの持っていた、奇妙な形のペンとノートで、ウィングマンの落書きをするのだが…。
 実は、これは、あおい(ポドリムス人・異次元の住人)が、開発者たるその父から託され、三次元に持って逃げてきた発明品で、書いたことが現実になる力を持つ「ドリームノート」であった(描いたことが現実になる…、と言うより、描いたことしか現実にならないというのが、ミソでこの辺が、連載当初いい演出になっていた)。
 と言うことで、健太は、正真正銘ウィングマンになることになるのだが…。当然、この発明品をあおいが持って逃げたのは、この力を利用して、ポドリムスを支配しようとする悪人がいるわけで、ドリームノートを奪いにくる刺客が、次々と健太を襲う。健太自身は試行錯誤し、あおいに助けられながら、徐々に真のヒーローになっていくという物語。

 ところで、当時連載を最初から見ていたものにとっては、ちょっと、おもしろい演出が記憶にある。連載第一回は、確か、巻頭フルカラー、残り全部2色カラー刷り。で、この当時のジャンプの二色と言えば、「赤・黒」だった。当然、最初にコスプレをしている健太のウィングマンコスチュームは「赤」。もちろん、第2回以降はモノクロなのだが、モノクロで「赤」を表現する場合には、ふつう、ベタか、かなり濃いめのトーンを使うことになる。が、これでは赤と黒の区別は二話以降の読者(単行本の読者も)には、よくわからない。
 で、桂正和氏が考えたのは、「ドリームノートに黒く書いちゃったから、コスチュームは黒」。これは、単行本ではよくわからないが、当時の連載を読んでいたものにとっては、「なるほど!」の演出だった。
 また、ウィングマンのパワーアップの結果、必殺技を出す過程として、ウィングマンの顔、胸の飾りが、青→黄→赤に変わる演出があったが、この技の初出のときも、確か巻頭カラーだったような気がする。
 この辺は、いかに絵を説得力を持ってみせるか、そして、それを魅せるタイミングをつかむかという、氏の並々ならぬ努力が現れているといえる。

 さらに、ストーリーは、だいたい3部作になっていたと思う。が、中盤以降は、編集部の意向なのか、健太の成長よりも、ラブコメ色が強くなってきている。この辺は、氏もかなり四苦八苦していたようで、連載当初のはちゃめちゃぶりが、影を潜めて、私自身は、おもしろくなくなったなぁ~と、思い始めた頃。実は、このころにアニメ化され、1年間にわたって放映されたのだが、これがまた、ひどい出来で…。
 そして、最終回に向けて、最後の巨大な敵が現れたあたりから、ラブコメ色は、美紅・あおいと、広野健太の関係描写に収斂され、この辺から、氏も慣れてきたのか、人物描写が非常に緻密になって、再度、おもしろくなってきた(シリアスになってきたともいえる)。
 ただ、中盤のラブコメ路線と、アニメの失敗で離れたファンは、どうも帰ってこなかったようで、この巨大敵(ライエルと言う名前だったらしい、今、ネットで調べた)編で、この作品は打ち切りになる。もっとも、そのおかげで、強さのインフレーションはドラゴンボールのようにはならず、まっとうな作品として、終えることができた。
 また、中盤から、終盤にかけて描いてきたラブコメのおかげで、最終話のあおいと健太のやりとりが、非常に説得力を持って感情移入させられたのが印象に残る。当時子供心に、「あおいさんラヴ!」だったので、マジ泣きした覚えが…。
 しかも、この最終話、実はジャンプ連載から単行本になるに際して、確か当時数えた記憶では、20ページ近い加筆がなされている。

 おそらく、桂正和氏の出世作と言えば、「電影少女」(私は未読です)だと思うが、そのラブコメ描写については、このウィングマンで、相当たたかれ、苦しめられた結果収得したものと思われる。だから、やはり、このウィングマンがあったからこそ、今の桂正和があるかと思う。
 実をいうと、氏の漫画は、このウィングマンと、その後、単行本2巻分でうち切られてしまった「ヴァンダー」しか読んでいない。ラブコメがあまり好きでなかったので、「電影少女」以降は、すっかりご無沙汰しているのだが、最近、またヒーローものを書き始めた様子。ただ、今度は、ちょっと大人のヒーローらしい。
 氏が、連載当初、なにかのインタビューで答えていたもので、非常に印象に残ったのが、「変身ヒーローが、描きたかったんですよ」という、非常にまっすぐで、純粋な発言だった。
 だから、氏が「ヒーローもの」に帰ってきたのを、喜びたい。

 で、以降の作品はしらないから、何ともいえないが、とにかく、この作品(特に前半)は、作家が、描きたいものを、描きたいように描く喜びというものが、まっすぐに伝わってくるので、是非、物づくりに携わっている人に読んでもらいたい作品。
 もちろん、そういう人でなくても、画面から「楽しさ」が伝わってくる、数少ない作品なので、是非、ご一読を。

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 このレビューを作成する途中で、ウィングマン(あちらのページではウイングマンという表記になっている。アップされている単行本のタイトルロゴはどっちにも見えるので、どっちが正しいってことはないと思います)について、とっても詳しく紹介しているページを発見しました。
http://www015.upp.so-net.ne.jp/wingman/index.html
 未だに、根強い人気を誇る作品なんですね。ちょっと感激。
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