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駄目オタ徒然草
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「スペル星人…?」(マンガ評:宇宙家族カールビンソン)
「宇宙家族カールビンソン」 あさりよしとお 全13巻
講談社アフタヌーンコミックス

 このレビューには、あまり「ギャグ」ものを紹介してこなかった。別に嫌いなわけではない。子供の頃、最初に買ったコミック単行本が「すすめパイレーツ」だったことを考えると、むしろギャグマンガの方がすきといえる。
 ただ、ギャグマンガというのは、レビューが非常に難しい。というのも、「笑いのツボ」というのは、個性が如実に表れ、笑いの沸点が100人いれば、100通りあると思われるからだ。
 例えば、わかりやすい例えで言えば、私自身の感性として、最近のお笑い芸人で、長井秀和は、ちっともおもしろいとは思わないが、波田陽区は非常にツボにはまる。青木さやかはつまらないが、友近は笑える。ただ、どうして、そうなのかは説明できないし、説明できたとしても、話した相手に共感を持ってもらえるかは疑問だ。

 で、その中で、比較的説明しやすい笑いと言うことで、この作品をまず、レビューのまな板に載せることにした。

 本作は、3つのパラレルワールドがある。これは、連載された雑誌が3つあったからである。まずはアニメージュ(徳間書店)に、連載されていた(らしい)、「元祖 宇宙家族カールビンソン」。単行本は1巻のみ。
 そして、廃刊になって現在存在しない「少年キャプテン」(徳間書店)に掲載された、「宇宙家族カールビンソン」。こちらは、現在講談社アフタヌーンコミックから「SC版 宇宙家族カールビンソン」として、出版されている。
 さらに、少年キャプテンが廃刊となって、版権が移転した先の講談社「アフタヌーン」に連載された、「宇宙家族カールビンソン」。
 で、ファンの間では「カールビンソン」と言えば、少年キャプテンに連載されていたものをいうのが、一般的だ。これは、連載期間が長く、その舞台背景が確立されていること、アニメージュ版が、あくまで、SC版の「パイロットフィルム」的な世界設定であること、アフタヌーン番の「カールビンソン」が、1巻分執筆後、作者の意向(と思われる)によって、実質的にうち切られていることによる。

 さて、この「宇宙家族カールビンソン」の魅力は、作者のあさりよしとお氏が有する、映画・漫画・アニメ業界のマニアック楽屋ネタを、普通の人が元ネタをしらなくても笑えるように構成し、魅せる点にある。
 マニアックネタと言えば、久米田康治の「勝手に改蔵」が、最近ではメジャーだが、「宇宙家族カールビンソン」が、彼の作品と異なるのは、まさに上記の点にある。
 また、この作品では、マニアックネタを披露するものの、マニアックネタ自体がテーマではなく、あくまで登場人物たちの異常な関係性を、ほのぼのと描くことにある。マニアックネタは、あくまで付加価値であり、読者はそこで描かれる主人公たちの不条理ではあるが、変にほのぼのとした世界を生ぬるく見守りつつ、くすくすと笑うことになる。

 さて、では、冒頭のあらすじ…、と言うより、ギャグマンガなんだから、舞台設定と言った方がいいかな?(ちなみに、設定はあくまで少年キャプテン版のものです)
 はるか未来、宇宙をどさ周りする旅の芸人一座の宇宙船が、惑星アニカ上空で、謎の宇宙船と衝突する。謎の宇宙船は大破、謎の宇宙船の乗員はほぼ全滅、たった一人生存していた赤ん坊を、この旅の一座が引き取って、謎の宇宙船の星の民が彼女(生き残りの赤ん坊)を見つけにくるまで、この惑星アニカで、謎の宇宙船に残っていた彼女の母星の文化のデータを再現しながら、育てることになる。
 その赤ん坊の母なる星は…「地球」。旅のどさ周り一座の座長は、巨大なネズミ型生物、彼女が母親役を。父親役は、退役軍人の大量殺戮ロボット(ただし、記憶をなくして、天然ボケになっている。たまに、過去の遺物たるオプションの破壊兵器を異空間から呼び出して、装備する…)。ペットのリスのたーくんは、リスとは名ばかり、脳みそむき出しの頭に、神経節だけの体。と、かなりきている配役。彼らが再現する地球の文化も、かなりずれている。その中ですくすく育つ赤ん坊は、「コロナ」と名付けられ、元気に育っていく。
 キャプテンが廃刊になる直前には、家族で出かけたほかの星の市場で、地球人の宇宙飛行士とすれ違ったり、おとうさんが、なぜ、天然ボケになってしまったのかが語られたりと、物語が動き始めていたので、打ち切りは非常に残念だった。
 まあ、この話を終えるなら、たった一つの結末しかなかったと思われるので、それはまた、永遠にこの物語が途絶えてしまったのは、ある意味幸せなのかもしれない。

 と言うわけで、この漫画は老若男女、誰でも楽しめるが、特に30~40歳くらいの方で、我こそは博識と思われる方に読んでいただきたい。たぶん、少なくとも中盤以降は、その層がマニアックネタのターゲットになっている。
 ちなみに、12話は当初欠番になっていたが、後に「幻の」という冠をつけて掲載されたタイトルが、「遊星より愛を込めて」…。これで笑えた人は、確実に全編通じて楽しめるので、是非ご一読を(ちなみに、同エピソード自体が、あの作品の12話のパロディーになっています)。
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